フルーツのお酢で食べるところ天のタレに使われている『黒酢』のこだわり。それは、静置発酵法でつくる黒酢なのです。
ゆっくり、ゆっくりと―。
時間をかけてお酢を醸す蔵のお酢造りは、時間と手間をかける子育てのようなものだと思っています。
肌で感じる温度や湿度をもとに、子どもの成長を見守るように、ゆっくりとお酢が醸されていくのを待ちます。
そうして醸し出された当蔵のお酢には、まろやかな酸味と旨み、そして芳醇な香りがあります。
お酢が本来持っている奥深い味わいをどうぞご賞味くださいませ。
代々続く醸造法 静置発酵法
蔵では、この地方伝統のお酢・粕酢を醸造しています。
搾り機である槽に酒粕を水に溶かしたものをいれた袋を層になるように丁寧に置いてゆき、この槽(ふね)で搾り、お酢の元になるもの(「すまし」といいます)をつくります。
蔵の中はこのようになっています。最初の発酵過程で約四十日、ここで酢が造られています。
写真にある木桶は「発酵槽」です。ここに「酢もろみ」と「種酢」を仕込み、表面に酢酸菌膜を浮かべてお酢を発酵させます。
酢酸菌は、空気に接している部分でしか働きません。お酢は表面のみ、つまり空気に触れているところでしか発酵をしていません。発酵槽の中では、自然と対流が起きています。お酢がゆっくりと循環して出来上がっていきます。そのために、出来上がるまでに日数が必要なのです。こうして時間をかけることによって、お酢にまろやかさや味わいが醸し出されてくるのです。
お酢は、お酒(アルコール)から造られます。アルコールをお酒に変えるのは「酢酸菌」という微生物のチカラです。この菌は酢造りではとても重要な役割を担っています。
この酢酸菌は、創業時からこの蔵で活き続けている伝統の酢酸菌です。
この菌が持っている個性が、この蔵のお酢の味や香りになるのです。ですから、菌が住み着いている蔵はもちろんのこと、使っている道具もとても大切にしております。 この酒店の酢造りは、主にこの酢酸菌が元気に働けるように見守ることなのです。
醸造蔵の中にはエアコンはありません。温度管理は毎日、その日の肌で感じた温度を元にして、蔵の窓を調節することで行っています。朝、窓を開け、日が落ちたら窓を閉める。基本的には昔とほとんど変わらない方法で醸造をしています。
酢酸発酵が終わったお酢は、まだ出来上がりではありません。熟成タンクに入れて数ヶ月間熟成をさせます。熟成期間中もお酢はまだ生きています。そのため、毎日朝晩お酢の様子を見て、これ以上発酵しないようにしています。ここでじっくり寝かせることで、よりまろやかな酸味が生まれます。熟成が終わったお酢は、殺菌、瓶詰めをして、お客様にお届けする製品になります。